給与を1か所から受けて年末調整を受けている会社員は、分配金など給与以外の所得が年20万円以下なら所得税の確定申告をしなくてもよいとされていますが、住民税にはこの特例がありません。所得税の確定申告をしない場合は、市区町村に住民税の申告をすることになります。医療費控除やふるさと納税のために確定申告をするときは、20万円以下の分配金も申告に含めます。
この記事は令和8年分(2026年1月〜12月の所得)を前提に、国税庁と市区町村が公表している内容をまとめています。分配金の税金の仕組みそのものは分配金の税金を先に読むと分かりやすくなります。
所得税の「20万円」の条件
国税庁が示している条件
国税庁は給与所得者のうち確定申告が必要な人の一つとして、給与を1か所から受けてその全部が源泉徴収の対象になっている人のうち、給与所得と退職所得を除いた各種の所得金額の合計が20万円を超える人を挙げています(国税庁 タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」)。
裏返すと、給与以外の所得の合計が20万円以下の会社員は、所得税の確定申告をしなくてもよいことになります。給与の年間の収入金額が2,000万円を超える人は、この条件に関係なく確定申告が必要です(同じページ)。
給与を2か所以上から受けている人は判定の仕方が違い、年末調整されなかった給与の収入金額と給与以外の所得の合計で20万円を超えるかどうかを見ます(同じページ)。
20万円は「所得」で数える
20万円は分配金として受け取った額ではなく、所得の金額で数えます。匿名組合型の分配金は原則として雑所得で(所得税基本通達36・37共-21)、雑所得の金額は収入金額から必要経費を引いて計算します(国税庁 タックスアンサー No.1500「雑所得」)。その収入金額は、確定申告の手引きでは「税込」、つまり源泉徴収される前の金額で書くことになっています(令和7年分 確定申告の手引き「雑所得」)。
口座に入った手取りの額で20万円を数えると、源泉徴収された分だけ少なく見積もってしまいますので、事業者の年間の取引報告書などで源泉徴収前の分配金の額を確かめましょう。
分配金だけでなく、給与以外の所得を合計する
条件にある「各種の所得金額の合計額」には、分配金のほかに、副業の雑所得や不動産所得など給与と退職所得以外の所得がすべて入ります(No.1900)。複数の事業者から分配を受けている人は、全社の分を足して判定します。
年末調整には分配金は入らない
年末調整は、勤め先が給与から源泉徴収した所得税等の合計を、その人が1年間に納めるべき税額に合わせる手続です(国税庁 タックスアンサー No.2662「年末調整のしかた」)。勤め先が扱うのは給与ですので、不動産クラファンの分配金は年末調整では精算されません。20万円を超える人は、自分で確定申告をすることになります。
公務員の方も給与所得者ですので、税の扱いは会社員と同じです。投資をしてよいかどうかといった勤め先の規程は税とは別の話ですので、勤め先で確かめてください。
住民税には「20万円」の特例がない
市区町村の案内
住民税には、20万円以下なら申告が要らないという特例はありません。横浜市は、1か所から給与の支払を受けていて給与所得以外の所得の合計が20万円以下の人を、市民税・県民税の申告をしなければならない人として挙げています(横浜市「市民税・県民税の申告について」、2026年4月1日更新)。同じページのよくある質問でも、給与以外の所得の合計が20万円以下なら原則として確定申告は不要だが、市民税・県民税の申告は必要と答えています。
上尾市も、住民税は給与所得以外の所得があれば所得の多寡にかかわらず申告しなければならないと案内しています(上尾市「給与所得以外の所得が20万円以下の場合、住民税の取り扱いはどうなりますか?」)。申告の様式や受付の方法は市区町村ごとに違いますので、1月1日に住んでいた市区町村の案内を確かめてください。
申告先と期限
住民税の申告は、その年の1月1日に住所があった市区町村に出します。横浜市の場合、期限は毎年3月15日(土日にあたるときは翌開庁日)で、窓口・郵送のほかにeLTAX(エルタックス)による電子申告も案内されています(横浜市)。令和8年分の所得なら、2027年に申告することになります。
確定申告をすれば、住民税の申告は要らない
所得税の確定申告書を税務署に出した人は、同時に市民税・県民税の申告をしたものとみなされますので、改めて住民税の申告をする必要はありません(横浜市)。20万円以下でも、あえて所得税の確定申告をすれば、住民税の手続はそれで済みます。
例:会社員が分配金15万円を受け取った場合
例:年末調整を受けている会社員が、1年間に源泉徴収前で15万円の分配金を受け取り、ほかに給与以外の所得も必要経費も無い場合で考えてみます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 給与以外の所得 | 15万円(20万円以下) |
| 受け取るときに差し引かれた所得税等 | 30,630円(15万円×20.42%) |
| 所得税の確定申告 | しなくてもよい(No.1900) |
| 住民税の申告 | 必要(確定申告をしない場合) |
| 住民税の所得割 | 15万円×10%で、およそ15,000円が翌年の住民税に加わる |
住民税の所得割の10%は、総務省が示している標準の税率です(総務省「個人住民税」)。所得税の確定申告をしなければ、差し引かれた30,630円はそのまま税金として納めた扱いで終わります。所得税率が低い人はこの中に差し引かれすぎの分がありますので、確定申告をして戻してもらうこともできます(次の節)。
20万円以下でも、申告に含める場合
医療費控除やふるさと納税で確定申告をするとき
20万円の決まりは、確定申告をしなくてもよい場合を定めたもので、確定申告をするときに20万円以下の所得を書かなくてよいという意味ではありません。国税庁は、医療費控除の還付申告をする場合などは、給与所得だけでなく20万円以下の所得もあわせて申告する必要があるとしています(国税庁 タックスアンサー No.1900 Q&A)。
ふるさと納税も、ワンストップ特例を申請していても確定申告をすると特例の申請は無効になりますので、寄附の全額を申告書に書くことになります(令和7年分 確定申告の手引き「確定申告をすれば税金が還付される方」)。このときも、分配金はほかの所得と一緒に申告します。
源泉徴収された税金を戻してもらいたいとき
課税される所得金額が195万円未満の人は所得税率が5%(復興特別所得税を含めて5.105%)ですので(国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」)、分配金から差し引かれた20.42%との差が戻る計算になります。還付申告をするなら、その年のほかの所得も含めて申告します。計算の例は源泉徴収された税金が戻る場合に載せました。
住民税の納め方は選べる
所得税の確定申告書の第二表には、給与以外の所得にかかる住民税を給与から差し引く(特別徴収)か、自分で納める(自分で納付)かを選ぶ欄があります(令和7年分 確定申告の手引き「住民税」)。確定申告書等作成コーナーでも、住民税等に関する事項として入力する画面があります(国税庁「令和7年分 確定申告書等作成コーナー パソコンご利用ガイド」)。住民税の申告を市区町村にする場合の徴収の方法は、市区町村の案内で確かめてください。
申告書の書き方は確定申告のやり方にまとめています。
よくある質問
Q. 20万円以下なら、何もしなくてよいですか?
A. 所得税の確定申告はしなくてもよい場合がありますが、住民税の申告は必要です。所得税の確定申告をすれば住民税の申告もしたものとみなされますので、どちらか一方の手続をすることになります(横浜市)。
Q. 分配金が入った年と、申告する年はいつですか?
A. 所得税の確定申告は、1月1日から12月31日までの1年間の所得について、原則として翌年2月16日から3月15日までに行います(国税庁 タックスアンサー No.2020「確定申告」)。2026年中に支払が確定した分配金は令和8年分として、2027年に申告します。事業者が税務署に出す支払調書にも、その年中に支払の確定した金額を書くことになっています(国税庁「匿名組合契約等の利益の分配の支払調書」記載要領)。
Q. 専業主婦(主夫)や年金生活の人も20万円の決まりは使えますか?
A. 20万円の決まりは給与所得者についてのものです。公的年金を受け取っている人には別に、公的年金等の収入が400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下なら確定申告をしなくてよいという決まりがあります(No.2020)。どちらにも当たらない人は、分配金の所得の額や所得控除の合計によって申告が要るかどうかが変わりますので、税務署で確かめてください。
この記事は、令和8年分の所得税・住民税について国税庁・総務省・市区町村が公表している一般的な内容をまとめたもので、個別の税務の判断を示すものではありません。住民税の申告の方法は市区町村ごとに違います。個別の判断は税理士・税務署・お住まいの市区町村にご相談ください。