任意組合型の不動産クラファンでは、組合が営む賃貸の事業の利益や損失が出資者に持分の割合で帰属しますので、分配金は雑所得ではなく不動産所得として申告します。ただし組合の業務の執行に関わらない出資者は、組合の事業から出た不動産所得の損失を、ほかの不動産所得や給与所得などと通算できない特例の対象になります。
この記事は令和8年分(2026年の所得を2027年に申告する分)を前提に、国税庁の通達・タックスアンサーと租税特別措置法の条文をもとに一般的な仕組みをまとめています。匿名組合型の分配金については分配金の税金を、契約の形そのものの違いは匿名組合型と任意組合型の違いを参考にしてください。
任意組合型と匿名組合型の違い
不動産クラファンの契約には、商法の匿名組合契約による形と、民法の組合契約(任意組合)による形があります。国税庁の所得税基本通達は、任意組合等を民法第667条第1項に規定する組合契約などで成立する組合と定め、匿名組合契約は商法第535条による契約として別に扱っています(所得税基本通達36・37共-19・36・37共-21)。
| 項目 | 匿名組合型 | 任意組合型 |
|---|---|---|
| 契約の根拠 | 商法第535条の匿名組合契約 | 民法第667条の組合契約 |
| 出資者の所得 | 原則として雑所得(通達36・37共-21) | 組合の事業の内容に従って区分。賃貸なら不動産所得(通達36・37共-20) |
| 申告書の欄 | 雑所得の「その他」 | 不動産所得の欄 |
| 損失の扱い | 雑所得の損失は他の所得と損益通算できない(No.1500) | 特定組合員の組合事業の不動産所得の損失は生じなかったものとみなす(措法41条の4の2) |
どちらの形かは、募集ページや契約成立前書面に書かれています。同じ事業者でも募集によって形が違うことがありますので、申し込んだ募集ごとに確かめましょう。
分配金が不動産所得になる理由
組合の利益は、分配割合に応じて出資者のものになる
通達36・37共-19は、任意組合等の組合員の組合事業に係る利益や損失の額を、組合の利益や損失のうち分配割合に応じて受け取るべき金額または負担すべき金額としています(所得税基本通達)。匿名組合型では、出資者は営業者から利益の分配を受け取る立場ですが、任意組合型では組合の事業そのものの損益が持分に応じて出資者に帰属する扱いになります。
所得の区分は、組合の事業の内容で決まる
通達36・37共-20は、組合員に配分される利益や損失を、組合の主たる事業の内容に従って不動産所得・事業所得・山林所得・雑所得のいずれかとする計算の方法を示しています(同じ通達)。不動産所得は土地や建物などの貸付けから生ずる所得ですので(国税庁 タックスアンサー No.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」)、組合が物件を貸して賃料を得る事業であれば、出資者の所得は不動産所得になります。
計算の方法は3つある
通達36・37共-20は組合員の所得の計算の方法として次の3つを挙げています。原則は総額で按分する方法で、それが難しい場合に継続して適用しているときに限り、中間の方法と純額で按分する方法を認めています(所得税基本通達)。
| 方法 | 中身 |
|---|---|
| 総額で按分する方法(原則) | 組合事業の収入金額・支出金額・資産・負債などを、分配割合に応じて各組合員のものとして計算する |
| 中間の方法 | 組合事業の収入金額と、それに係る原価・費用・損失の額を、分配割合に応じて各組合員のものとして計算する |
| 純額で按分する方法 | 組合事業の利益の額または損失の額だけを、分配割合に応じて各組合員に按分する |
どの方法で計算するかによって、申告書に書く収入金額や必要経費の額が変わります。事業者から届く組合の計算書類にどの数字が示されているかを確かめ、どの方法で申告するかは税理士や税務署に相談するのが確実です。
申告の仕方の違い
不動産所得の欄と収支内訳書
不動産所得の金額は総収入金額から必要経費を引いて計算し、白色申告の人は『収支内訳書』、青色申告の人は『青色申告決算書』で計算して確定申告書と一緒に出します(令和7年分 確定申告の手引き「不動産所得」)。令和7年分の第一表では、不動産所得の収入金額をウの欄に、所得金額を③の欄に書きます(同じページ)。欄の記号や番号は年分ごとに変わることがありますので、令和8年分の申告では国税庁の最新の手引きで確かめてください。
組合事業ごとの明細書を付ける
組合事業から生じる不動産所得がある人は、組合事業ごとに収支に係る一定の明細書を確定申告書に添付しなければならないとされています(国税庁 タックスアンサー No.1391「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」)。複数の任意組合型の募集に出資している人は、募集ごとに明細を分けて用意することになります。
源泉徴収は事業者の書類で確かめる
匿名組合型で分配金から20.42%が差し引かれるのは、所得税法の匿名組合契約等の利益の分配についての定めによるものです(国税庁「源泉徴収のあらまし(令和8年版)」第8章)。任意組合型の分配で源泉徴収がされているかどうか、事業者の書類にどの数字が書かれているかは、申し込んだ事業者の案内と年間の計算書類で確かめてください。
20万円と住民税の扱いは同じ
会社員が所得税の確定申告をしなくてもよい「給与以外の所得が20万円以下」の条件には、不動産所得も含めた給与・退職所得以外の所得の合計で判定します(国税庁 タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」)。住民税には20万円以下の特例がない点も、匿名組合型と同じです。詳しくは会社員の「20万円」と住民税の申告にまとめています。
損失が出たときの特例(租税特別措置法第41条の4の2)
業務の執行に関わらない組合員の損失は「生じなかった」ものとされる
不動産所得の損失は、原則として他の黒字の所得から差し引くことができます(損益通算)。ただし租税特別措置法第41条の4の2は、特定組合員に当たる個人が組合事業から不動産所得を得ている場合に、その組合事業による不動産所得の損失を所得税に関する法令の適用上は生じなかったものとみなすと定めています(租税特別措置法(e-Gov法令検索))。
国税庁は、この損失は他の不動産所得の黒字から差し引くこともできず、損益通算の対象にもならないと説明しています(No.1391)。たとえば自分で持っている賃貸物件の黒字があっても、任意組合型の募集の赤字をそこから差し引くことはできません。
特定組合員とはどんな人か
条文の定義では、組合事業に係る重要な財産の処分や譲受け・多額の借財に関する業務の執行の決定に関与し、かつ契約を締結するための交渉などの重要な部分を自ら執行する組合員以外の組合員が特定組合員です(租税特別措置法第41条の4の2)。物件の売買や借入れの判断を事業者に任せて出資するだけの投資家は、この定義からすると特定組合員に当たると考えられます。自分が当たるかどうかの判断は、税理士や税務署に確かめてください。
匿名組合型の損失との違い
匿名組合型の雑所得の損失も、給与所得などほかの所得と損益通算できません(国税庁 タックスアンサー No.1500「雑所得」)。どちらの形でも、不動産クラファンの損失で給与の税金を減らすことはできないと考えておくほうが安全です。元本割れのときの扱いは源泉徴収された税金が戻る場合と、元本割れしたときの扱いでも取り上げています。
よくある質問
Q. 任意組合型も確定申告書等作成コーナーで申告できますか?
A. 作成コーナーでは、不動産所得がある人は「決算書・収支内訳書(+所得税)」を選ぶと、収支内訳書などを作った後にそのまま所得税の申告書を作れると案内されています(国税庁「令和7年分 確定申告書等作成コーナー パソコンご利用ガイド」)。組合事業ごとの明細書の扱いも含めて、画面の案内と国税庁の最新の手引きで確かめてください。
Q. 任意組合型はNISAで買えますか?
A. 任意組合の出資は、NISAで非課税になる上場株式等には入っていません。理由はNISAは使えるかにまとめています。
Q. 自分の募集が任意組合型か匿名組合型か、どこで分かりますか?
A. 募集ページの商品の概要や契約成立前書面に、契約の形(匿名組合契約・任意組合契約など)が書かれています。不動産特定共同事業法の契約の種類については不動産特定共同事業法(不特法)の許可でも扱っています。
この記事は、令和8年分の所得税について国税庁の通達・タックスアンサーと租税特別措置法の条文をもとにまとめた一般的な内容で、個別の税務の判断を示すものではありません。任意組合型の申告は、計算の方法の選び方や明細書の作り方で扱いが変わります。個別の判断は税理士・税務署にご相談ください。