匿名組合型の不動産クラファンの分配金は原則として雑所得になり、受け取るときに20.42%の所得税等が差し引かれたうえで、確定申告では給与などほかの所得と合わせて税額を計算し直します(総合課税)。差し引かれた20.42%で税金が終わるわけではありません。所得の多い人は申告で足りない分を納め、少ない人は戻ってくることがありますし、住民税も翌年に別に計算されます。
この記事は令和8年分(2026年1月〜12月に受け取った分配金で、申告は2027年)を前提に、国税庁などの公表している内容をまとめたものです。税の制度は毎年のように変わりますので、申告の前には国税庁の最新の案内を確かめてください。
分配金は「雑所得」になる
匿名組合型の分配金
不動産クラファンの多くは、投資家と事業者が匿名組合契約を結ぶ形をとっています。国税庁の所得税基本通達は、匿名組合員が営業者から受ける利益の分配を雑所得としています(所得税基本通達36・37共-21)。投資家が事業の重要な業務の決定に加わって営業者と共に経営していると認められる場合は別の所得になるとされていますが、募集に申し込んで分配を待つだけの投資家であれば、雑所得として扱われるのが原則です。
同じ通達の注には、出資の払戻しとして受け取るお金は利益の分配に含まれないことも書かれています。運用が終わって戻ってくる元本は、分配金とは別のものとして扱われます。
雑所得とはどんな所得か
雑所得は、給与所得・不動産所得・配当所得などほかの9種類の所得のどれにも当たらない所得です(国税庁 タックスアンサー No.1500「雑所得」)。雑所得の金額は給与所得などほかの所得の金額と合計して総所得金額を求め、そのうえで納める税額を計算しますので、分配金だけに決まった税率がかかるわけではありません。
任意組合型は不動産所得
任意組合契約の形をとる商品では、出資者が組合の事業の利益を持分に応じて受け取る扱いになり、賃貸の事業であれば不動産所得として申告します。匿名組合型とは申告の仕方や損失の扱いが違いますので、任意組合型の分配金は不動産所得で別にまとめています。契約の形の違いは匿名組合型と任意組合型の違いも参考にしてください。
受け取るときに20.42%が差し引かれる
源泉徴収の率と根拠
国内で匿名組合契約に基づく利益の分配を支払う事業者は、支払いの際に20.42%の税率で所得税及び復興特別所得税を源泉徴収します(国税庁「源泉徴収のあらまし(令和8年版)」第8章 Ⅳ 匿名組合契約等の利益の分配に対する源泉徴収)。20.42%は、所得税の20%に、その2.1%にあたる復興特別所得税を足した率です(国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」)。
源泉徴収が義務になるのは、事業者が10人以上の匿名組合員と結んでいる契約の分配です(所得税法第210条・第212条第3項)。クラウドファンディングの仕組みで人数をどう数えるかについては、東京国税局が契約の数ではなく匿名組合員の数で判定するという考え方を示しています(東京国税局 文書回答事例)。
例:100万円を年5%・1年で運用した場合
例:100万円を想定利回り年5%・運用期間12か月の募集に出資し、予定どおり分配された場合で計算してみます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 税金がかかる前の分配金 | 50,000円 |
| 源泉徴収される所得税等(50,000円×20.42%) | 10,210円 |
| 口座に入る額 | 39,790円 |
想定利回りは予定の値で、元本も分配も保証されていませんので、この表は計算の仕組みを示すための例です。実際に差し引かれた額は、事業者が出す年間の取引報告書や支払調書の写しなどで確かめられます(書類の名前や出し方は事業者ごとに違います)。
住民税は差し引かれていない
上場株式の配当などは、所得税等の15.315%のほかに地方税5%も支払いのときに差し引かれます(国税庁 タックスアンサー No.1330「配当所得」)。これに対して、源泉徴収のあらましの匿名組合の項に書かれているのは所得税及び復興特別所得税の20.42%だけで、住民税を差し引く定めは書かれていません(源泉徴収のあらまし 第8章)。住民税は翌年に、申告した所得をもとに市区町村が計算します。
確定申告で「総合課税」として精算する
源泉徴収は前払い
源泉徴収で差し引かれた税金は、その年の税金の前払いにあたります。確定申告は1年間の所得と税額を計算して確定させる手続で、源泉徴収された税金があれば、その過不足を申告で精算します(国税庁 タックスアンサー No.2020「確定申告」)。
所得税率によって、足りない人と戻る人がいる
総合課税では、分配金を含めた所得の合計に対して5%から45%の累進税率がかかります(No.2260)。分配金の部分にかかる率を、所得税率に復興特別所得税の2.1%を上乗せした形で見ると、次のようになります。
| 課税される所得金額(令和8年4月1日現在の速算表) | 所得税率 | 復興特別所得税を含めた率 | 源泉徴収の20.42%との比べ |
|---|---|---|---|
| 1,000円〜1,949,000円 | 5% | 5.105% | 差し引かれすぎ(戻る) |
| 1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 10.21% | 差し引かれすぎ(戻る) |
| 3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 20.42% | ほぼ同じ |
| 6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 23.483% | 足りない(申告で納める) |
| 9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 33.693% | 足りない(申告で納める) |
| 18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 40.84% | 足りない(申告で納める) |
| 40,000,000円以上 | 45% | 45.945% | 足りない(申告で納める) |
表は分配金の部分だけを取り出したおおよその見方で、実際の税額はほかの所得や所得控除を含めた申告書の計算で決まります。戻る側に当たる人の手続は源泉徴収された税金が戻る場合で詳しく扱います。
会社員は「20万円」で申告が要らない場合がある
給与を1か所から受けて年末調整を受けている会社員は、給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円以下なら、所得税の確定申告をしなくてもよいとされています(国税庁 タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」)。ただしこの決まりは所得税の話で、住民税には同じ特例がありません。詳しくは会社員の「20万円」と住民税の申告にまとめました。
住民税は翌年に10%
個人住民税の所得割は、前年1月1日から12月31日までの所得に対して10%(道府県民税4%・市町村民税6%)とされています(総務省「個人住民税」)。分配金の雑所得もこの所得に含まれますので、例の50,000円の分配金に必要経費がなければ、翌年の住民税がおよそ5,000円増える計算になります。
所得税の確定申告書を税務署に出せば、住民税の申告もしたものとみなされます。確定申告をしない人は、市区町村に住民税の申告をすることになります(横浜市「市民税・県民税の申告について」)。
損をしたときは、ほかの所得と相殺できない
雑所得の計算で出た損失は、給与所得などほかの所得と損益通算できません(No.1500)。元本割れのときにどう扱うかは源泉徴収された税金が戻る場合と、元本割れしたときの扱いで取り上げます。
NISAのような非課税の口座でも扱えません。理由はNISAは使えるかに書きました。
想定利回りと税金を合わせて見る
クラカレの記録で、2026年9月以降に始まった募集の想定利回りを帯ごとに数えると次のとおりです。想定利回りは税金がかかる前の予定の値ですので、受け取る額を見積もるときは、源泉徴収の20.42%と翌年の住民税を差し引いて考えることになります。
| 想定利回り(年率) | 全体 | 不特法の許可の事業者 | 金融商品取引業の登録の事業者 |
|---|---|---|---|
| 4%未満 | 12件(9%) | 2件(6%) | 10件(10%) |
| 4%台 | 10件(8%) | 6件(17%) | 4件(4%) |
| 5%台 | 7件(5%) | 3件(8%) | 4件(4%) |
| 6%台 | 31件(23%) | 11件(31%) | 20件(21%) |
| 7〜9%台 | 46件(35%) | 5件(14%) | 41件(43%) |
| 10%以上 | 26件(20%) | 9件(25%) | 17件(18%) |
利回りの数字の読み方は想定利回りの見方にまとめています。
よくある質問
Q. 源泉徴収されているのに、確定申告は必要ですか?
A. 源泉徴収された税金はその年の税金の前払いにあたり、確定申告でその過不足を精算するのが原則です(No.2020)。会社員で給与以外の所得が20万円以下の人などは所得税の申告が要らない場合がありますが、その場合も住民税の申告は別に必要です(No.1900・横浜市)。
Q. 20万円は分配金の手取りで数えますか?
A. 国税庁の確定申告の手引きは、雑所得の収入金額を税込み、つまり源泉徴収される前の金額で書くとしています(令和7年分 確定申告の手引き「雑所得」)。収入金額から必要経費を引いた所得の金額で、20万円を超えるかどうかを判定します。
Q. 2027年から税率は変わりますか?
A. 令和9年(2027年)1月1日以後に生じる所得については、復興特別所得税の率が1.1%に下がり、源泉徴収すべき所得税の額の1%にあたる防衛特別所得税が合わせて源泉徴収されることになっています(No.2260)。2027年に受け取る分配金の扱いは、国税庁の最新の案内で確かめてください。
この記事は、令和8年分の所得税・住民税について国税庁・総務省・市区町村が公表している一般的な内容をまとめたもので、個別の税務の判断を示すものではありません。契約の内容やほかの所得によって扱いは変わりますので、個別の判断は税理士・税務署にご相談ください。