匿名組合型は投資家が事業者に出資して利益の分配を受ける契約で、出資したお金は事業者の財産になります。任意組合型は投資家と事業者が組合をつくって共同で不動産の事業を行う契約で、組合の財産は組合員みんなの共有になります。分配金の税金の扱いも違い、匿名組合型の分配は原則として雑所得、任意組合型の分配は組合の事業の内容によって所得の種類が決まります。
法律での2つの型
不動産特定共同事業法は、不動産特定共同事業の契約の種類を条文で分けています(不動産特定共同事業法 第2条第3項)。
| 型 | 条文の中身(要約) |
|---|---|
| 任意組合型(第1号) | 各当事者が出資し、共同の事業として、業務の執行を一部の当事者に任せて不動産取引を行い、収益を分配する契約 |
| 匿名組合型(第2号) | 一方が相手方の不動産取引のために出資し、相手方がその財産で不動産取引を行い、利益を分配する契約 |
| 賃貸型(第3号) | 自分たちの共有の不動産を相手方に賃貸し(または賃貸を任せ)、相手方がその不動産で取引を行い、収益を分配する契約 |
この記事では、不動産クラファンの案件ページに出てくる匿名組合型と任意組合型を比べます。
どちらの型かは広告に書かれている
不動産特定共同事業法は、事業者が広告をするとき、契約の種別(任意組合型・匿名組合型などのどれか)を示すよう定めています。あわせて、事業者が契約の当事者になるのか、代理や媒介をするのかも示すことになっています(不動産特定共同事業法 第18条第2項)。案件ページでは「契約形態」「スキーム」といった欄に書かれていることがあり、契約成立前書面にも載っています。
出資したお金は誰のものか
匿名組合型:事業者(営業者)の財産になる
匿名組合では、投資家(匿名組合員)の出資は、事業を行う営業者の財産に属すると商法で定めています(商法 第536条)。同じ条文で、匿名組合員は営業者の業務を執行できないこと、営業者の行為について第三者に対して権利も義務も持たないことも定めています。
投資家は物件の持ち主になるのではなく、営業者に出資して利益の分配を受ける立場です。物件の運営は営業者が行い、投資家が口を出すことはできません。営業者が倒産したときに出資がどう扱われるかは、出資が営業者の財産になっているという点が出発点になります。倒産のリスクは不動産クラファンのリスクで書いています。
任意組合型:組合員の共有になる
任意組合では、各組合員の出資と組合の財産は、組合員全員の共有に属すると民法で定めています(民法 第668条)。組合員の個人的な債権者は、組合の財産に対して権利を行使できません(同 第677条)。
一方で民法は、組合の債権者が、組合の財産に加えて各組合員に対しても権利を行使できると定めています(同 第675条)。実際の募集で、組合員がどこまでの負担を負い得るのかは契約の決め方によりますので、契約成立前書面で確かめておく必要があります。
持ち分の名義
任意組合型の物件が誰の名義で登記されているか、投資家の持ち分がどう記録されるかは、募集ごとに違うことがあります。この記事では一般化せず、契約成立前書面の対象不動産の項目で確かめることをお勧めします。
分配金の税金
匿名組合型:原則として雑所得
匿名組合員が営業者から受ける利益の分配は、雑所得とすると国税庁の所得税基本通達で定めています。営業者と共に事業を経営していると認められる場合は例外です(国税庁 所得税基本通達36・37共-21)。営業者の業務の執行に関わらない投資家の分配は、この原則のほうにあたります。
任意組合型:組合の事業の内容で決まる
任意組合の組合員は、組合の事業で生じた利益や損失を、分配の割合に応じて自分の所得として計算します(同 通達36・37共-19・36・37共-20)。所得の種類は組合の事業の内容によって決まり、通達では不動産所得・事業所得・山林所得・雑所得のいずれかとしています。不動産の賃貸を行う組合の分配は、不動産所得として申告することになります。
申告の違いは別の記事で
雑所得と不動産所得では、確定申告で書く場所が違います。損失が出たときの扱いも違い、雑所得の損失は他の所得と損益通算できません(国税庁タックスアンサーNo.1500「雑所得」)。匿名組合型の税金は分配金の税金で、任意組合型の申告は任意組合型の分配金は不動産所得で書いています。個別の判断は、税理士や税務署に確かめてください。
最低投資額と手数料
最低投資額は、型ではなく募集で決まる
最低投資額は、契約の型で決まるものではなく、募集ごとに事業者が決めています。型ごとの最低投資額の傾向は、クラカレではまだ集計していません。事業者ごとの最低投資額は1万円から始められるかで一覧にしています。
型によって手数料が違う事業者もある
同じ事業者が両方の型の募集をしていて、型によって手数料の扱いが違うこともあります。たとえばTSON FUNDINGの案内では、分配・償還の振込手数料は、匿名組合型では事業者の負担、任意組合型では組合員の負担(550円を組合員で均等に割った額と130円)としています。手数料は事前入金と申込後入金の違いの表で事業者ごとに見られます。
申し込む前に確かめること
案件ページの契約形態の欄
まず、その募集が匿名組合型なのか任意組合型なのかを、案件ページの表示で確かめます。同じ事業者でも、募集によって型が違うことがあります。
契約成立前書面
契約成立前書面には、契約の型・事業者の立場・対象不動産・出資金の使い道・損失の負担の順番などが書かれています。劣後出資がある募集では、その割合と負担の順番も載っています(劣後出資の割合の見方)。比べるほかの項目は比べるときに見る項目にまとめています。
よくある質問
Q. 匿名組合型と任意組合型、どちらの募集が多いですか
A. 型ごとの件数は、クラカレではまだ数えていません。案件ごとに型を記録できるようになった段階で、この記事に表を加えます。
Q. 任意組合型なら、物件の持ち主になれるのですか
A. 民法では組合の財産は組合員の共有に属するとしていますが、それぞれの投資家の持ち分をどう扱うか、登記をどうするかは募集の契約によります。契約成立前書面で確かめてください。
Q. 貸付型(ソーシャルレンディング)の契約はどちらの型ですか
A. 貸付型は、投資家の出資をファンドの運営会社を通じて企業などに貸し付ける仕組みで、不動産特定共同事業法ではなく金融商品取引法の枠組みになります(金融庁「ソーシャルレンディングについて」)。契約の型は、募集ごとの書面で確かめてください。違いはソーシャルレンディングとはで書いています。
法律と通達の内容は、e-Gov法令検索と国税庁の公開している原文をもとにまとめた一般的な説明です。個別の契約の扱いや税金の判断は、契約成立前書面と専門家(税理士・税務署など)で確かめてください。