投資の種類を比べると、不動産クラファンは預金や個人向け国債より利回りが高い一方で、元本を守る公的な仕組みがなく、運用期間中は換金できません。株や投資信託と比べると、毎日値段が付いて上下することはありませんが、損失は運用の終わりや事業者の破綻のときにまとめて表に出ます。つまり、預金や株と比べてリスクが大きいか小さいかという1本の物差しより、リスクの種類が違うと考えたほうが実態に近い商品です。この記事では6つの商品を同じ項目で並べたうえで、1つずつ違いを説明します。
投資の「リスク」と「リターン」とは
投資でいうリスクは、危険の大きさではなく「結果が不確実であること」で、具体的にはリターンの振れ幅を指します(資産運用業協会「リスクとリターン」)。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2025年4月から使っている基本ポートフォリオの資料では、過去30年の月ごとのリターンから推計した振れ幅(標準偏差)を、次のように示しています(GPIF「基本ポートフォリオの詳細」)。
| 資産 | リターンの振れ幅(標準偏差・年率) | 期待リターン(名目・年率) |
|---|---|---|
| 国内債券 | 2.60% | −0.3〜3.2% |
| 外国債券 | 9.72% | 1.4〜4.9% |
| 国内株式 | 19.19% | 4.0〜7.5% |
| 外国株式 | 20.35% | 4.6〜8.1% |
期待リターンは過去の実績ではなく、4つの経済の見通しごとに推計した将来の値です。振れ幅が大きい資産ほど期待リターンも高いという関係が、この表からも読み取れます。
一般の解説では、この関係を「ローリスク・ローリターン」「ミドルリスク・ミドルリターン」「ハイリスク・ハイリターン」の3つに分けて、預金はロー、株はハイ、不動産クラファンはミドルと並べることが多くあります。ただ、不動産クラファンには市場の値段がありませんので、上の表のような振れ幅の数字をそもそも計算できません。どの点でミドルと言えて、どの点で言えないのかは、このあと順に見ていきます。
6つの商品を一つの表で比べる
| 項目 | 預金 | 個人向け国債 | 株(個別株) | 投資信託 | REIT(上場) | 不動産クラファン |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 元本の守られ方 | 預金保険で1,000万円とその利息まで | 元本と利子は国が支払う | 保証なし | 保証なし | 保証なし | 保証なし |
| 値段の動き | 動かない | 動かない(中途換金の差引きあり) | 取引所で毎日動く | 基準価額が毎営業日動く | 取引所で毎日動く | 市場の値段は付かない |
| 途中の換金 | いつでも(定期は解約) | 発行から1年経てば可能 | 取引所でいつでも売れる | 解約・売却を申し込める | 取引所でいつでも売れる | 原則できない |
| 最低額 | 1円から | 1万円から | 株価×100株 | 100円から扱う会社もある | 1口の市場価格 | 事業者により1円〜50万円(1万円が多い) |
| 収益のもと | 利息 | 利子 | 値上がり益・配当 | 値上がり益・分配金 | 値上がり益・分配金 | 賃料・売却益・貸付の利息 |
| 損が出る主な理由 | 金融機関の破綻(保護の上限を超える分) | 中途換金の差引き | 株価の下落・業績悪化 | 組み入れた資産の値下がり | 投資口の値下がり | 物件価格の下落・遅延・事業者の破綻 |
| 分配の税金 | 20.315%の源泉分離課税 | 20.315%の申告分離課税 | 20.315%(申告分離を選んだ場合) | 20.315%(申告分離を選んだ場合) | 20.315%(申告分離を選んだ場合) | 雑所得で総合課税(源泉徴収20.42%) |
| NISA | 対象外 | 対象外 | 対象 | 対象 | 対象 | 対象外 |
表の税率は、復興特別所得税を含む2026年時点のものです。それぞれの根拠は、このあとの見出しの中で示します。
不動産クラファンは「ミドルリスク・ミドルリターン」なのか
利回りは、預金や国債より高い
クラカレが記録している募集の想定利回りは、次のとおりです。
| 想定利回り(年率) | 全体 | 不特法の許可の事業者 | 金融商品取引業の登録の事業者 |
|---|---|---|---|
| 4%未満 | 12件(9%) | 2件(6%) | 10件(10%) |
| 4%台 | 10件(7%) | 6件(17%) | 4件(4%) |
| 5%台 | 8件(6%) | 3件(8%) | 5件(5%) |
| 6%台 | 31件(23%) | 11件(31%) | 20件(20%) |
| 7〜9%台 | 47件(35%) | 5件(14%) | 42件(43%) |
| 10%以上 | 26件(19%) | 9件(25%) | 17件(17%) |
想定利回りは事業者が示す予定の値で、約束された値ではありません。それでも、このあと示す預金の金利や個人向け国債の利率より高い水準の募集が中心です。リターンの側から見れば、預金・国債と株の間に位置するという見方には根拠があります。
値動きが見えないことは、リスクが小さいことと同じではない
不動産クラファンは、株や投資信託のように毎日値段が付きません。そのため、途中で資産が目減りしていく様子が見えず、振れ幅の小さい商品に見えます。しかし、物件の価格が下がったり、貸付先の返済が遅れたりしたときの影響は、運用の終わりに戻ってくるお金が減るという形で、まとめて表に出ます。
ミドルという言葉では見えない3つのリスク
不動産クラファンには、利回りの高さとは別に、次の3つの性質があります。
- 換金できない:運用期間中は原則としてお金を引き出せません。期間は募集ごとに違います(下の表)
- 1件の結果に左右される:多くの資産に分散している投資信託と違い、1つの募集は1つの物件や貸付先で運用されます
- 事業者の信用に頼る:預金保険や日本投資者保護基金のように、事業者が破綻したときに一定額まで守る仕組みはありません
| 運用期間 | 全体 | 不特法の許可の事業者 | 金融商品取引業の登録の事業者 |
|---|---|---|---|
| 3か月以下 | 5件(4%) | 3件(8%) | 2件(2%) |
| 4〜6か月 | 26件(19%) | 10件(28%) | 16件(16%) |
| 7〜12か月 | 86件(64%) | 17件(47%) | 69件(70%) |
| 13〜24か月 | 13件(10%) | 2件(6%) | 11件(11%) |
| 25か月以上 | 4件(3%) | 4件(11%) | 0件(0%) |
損失がどのように起きるかは「不動産クラファンのリスク」に、劣後出資で損失をどこまで吸収できるかは「劣後出資の割合の見方」にまとめています。
預金との違い
元本の守られ方
預金は、預金保険制度で1つの金融機関につき預金者1人あたり元本1,000万円までとその利息が保護されます。利息が付かない決済用預金は全額が保護されます(預金保険機構「預金保険制度の概要」)。不動産クラファンへの出資は預金ではありませんので、この保護はなく、元本も保証されていません。
金利と利回り
預金の金利は、日本銀行の政策金利の引き上げに合わせて上がってきています。日本銀行は2026年9月18日の金融政策決定会合で、無担保コールレートを1.25%程度に誘導することを決めました(日本銀行「当面の金融政策運営について」)。三菱UFJ銀行の場合、2026年10月15日時点の金利は普通預金が年0.40%、スーパー定期の1年ものが年0.50%です(三菱UFJ銀行「円預金金利」)。普通預金は11月2日から年0.50%に上がると発表されています(三菱UFJ銀行の発表)。
お金の出し入れ
預金はいつでも引き出せます。不動産クラファンは、申し込んでから運用が始まるまでと、運用が終わってから戻るまでにも、お金が動かない期間があります。期間の長さは「申込から分配までの流れ」で、クラカレの記録の日数を示しています。
個人向け国債との違い
元本と利子を払うのが国か、事業者か
個人向け国債は、満期の元本と半年ごとの利子を国が支払います。変動10年・固定5年・固定3年の3つのタイプがあり、どれも1万円から買えて、金利には年0.05%の下限があります(財務省「個人向け国債」)。不動産クラファンの分配と償還は、物件や貸付先の運用の結果しだいで、支払うのは事業者です。
利率の水準
2026年10月に募集している個人向け国債の利率は、変動10年が年2.05%、固定5年が年2.39%、固定3年が年2.07%です(財務省 10月募集分の発行条件)。利率は毎月の募集ごとに変わります。不動産クラファンの想定利回りとの差は、国が払うのか事業者の運用しだいなのかという、引き受けるリスクの違いに対応しています。
途中の換金
個人向け国債は、発行から1年が経てば中途換金でき、直前2回分の利子(税引前)に0.79685を掛けた額が差し引かれます(財務省「個人向け国債」)。不動産クラファンは、途中で換金できないのが原則です。
株(個別株)との違い
値段の付き方
株の値段は取引所で買いと売りのつり合いで決まり、いちばん大きな要因は会社の業績です(日本取引所グループ「株価はどうやって決まるの?」)。1日に動ける幅には、前日の終値などをもとにした制限があります(日本取引所グループ「制限値幅」)。不動産クラファンには取引所の値段がありませんので、日々の値動きで損益が変わることはありません。
収益のもと
株の収益は値上がり益と配当です。配当は会社の業績しだいで、株を買っても必ずもらえるものではありません(日本証券業協会のQ&A(J-FLEC掲載))。不動産クラファンの分配も約束されたものではありませんが、想定利回りと運用期間が募集のときに示されていて、値上がり益をねらう商品ではありません。
最低額と換金
国内の株は100株単位で売買しますので(日本取引所グループ「売買単位」)、最低額は株価の100倍です。そのかわり、取引時間中ならいつでも売れます。不動産クラファンは1万円から申し込める事業者が多い一方で、途中では売れません。
預けたお金の保護
証券会社には、お客さんの資産を会社の財産と分けて管理する義務があります。分別管理に不備があって資産を返せない場合は、日本投資者保護基金が1人1,000万円まで補償します(日本投資者保護基金)。これは証券会社の破綻に備えた仕組みで、株価の下落による損失を補うものではありません。
投資信託との違い
分散の度合い
投資信託は、集めたお金を運用会社が多くの株や債券などに分けて運用する商品です。値段にあたる基準価額は、購入や換金を受け付ける営業日ごとに1回計算されます(金融庁「基準価額」)。元本の保証はありません(資産運用業協会「投資信託のリスク」)。不動産クラファンは1つの募集が1つの物件や貸付先にひもづきますので、分散したい場合は、自分で複数の募集や事業者に分けることになります。
銀行で買っても預金保険の対象ではない
銀行の窓口で買った投資信託や国債も、預金保険の保護の対象ではありません(預金保険機構「よくある質問」)。投資信託と不動産クラファンは、どちらも元本が保証されない商品という点では同じです。
税金とNISA
投資信託の分配金と売却益は、課税口座では20.315%の税率で申告分離課税を選べます(国税庁 No.1331)。NISAの成長投資枠でも買えます(金融庁「NISAの抜本的拡充・恒久化のイメージ」)。匿名組合型の不動産クラファンの分配金は原則として雑所得で(国税庁 所得税基本通達36・37共-21)、支払いのときに20.42%が源泉徴収されたうえで、給与などと合わせた総合課税になります(国税庁「源泉徴収のあらまし」第8章)。NISAは使えません。詳しくは「分配金の税金」と「NISAは使えるか」をご覧ください。
REIT(不動産投資信託)との違い
同じ不動産に投資する商品でも、上場しているREITは取引所で毎日値段が付き、いつでも売れます。不動産クラファンは募集ごとの物件に出資し、運用期間が終わるまで換金できません。値動きがある代わりに換金できるREITと、値動きがない代わりに換金できない不動産クラファンという違いです。契約の形や最低額まで含めた比較は「REIT・不動産小口化商品・不動産クラファンの違い」にまとめています。
ソーシャルレンディング(貸付型)との違い
ソーシャルレンディングは、ファンドを通じて企業などにお金を貸し、その利息を分配する仕組みです。不動産を担保にした貸付も多く、クラカレではこの貸付型の募集も記録しています。不動産を運用する型との違いは、分配のもとが賃料・売却益か利息か、事業者が受けているのが不特法の許可か金融商品取引業の登録か、という点です。詳しくは「ソーシャルレンディング(貸付型)とは」をご覧ください。
少額から始められる投資の比較
少額で始められるかどうかで並べると、預金は1円から、個人向け国債は1万円から、投資信託は100円から積み立てられる証券会社もあります。株は株価の100倍が必要で、値がさの株では数十万円以上になります。不動産クラファンの最低投資額は、事業者ごとに次のように分かれています。
| 事業者 | 最低投資額(いちばん多い額) | その額の件数 |
|---|---|---|
| 1円 | 11件/11件 | |
| 1万円 | 4件/4件 | |
| CCAMEL | 10万円 | 5件/6件 |
| 1万円 | 1件/1件 | |
| 1万円 | 9件/9件 | |
| 1万円 | 136件/146件 | |
| 1万円 | 27件/27件 | |
| 1円 | 22件/22件 | |
| 10万円 | 18件/18件 | |
| 50万円 | 90件/90件 | |
| 2万円 | 88件/88件 | |
| 1万円 | 30件/30件 | |
| RRimple | 1万円 | 6件/6件 |
| 10万円 | 12件/12件 | |
| 10万円 | 35件/35件 | |
| 1万円 | 4件/6件 | |
| 1万円 | 40件/40件 | |
| 1万円 | 50件/50件 | |
| 5万円 | 1件/1件 | |
| 1万円 | 54件/54件 | |
| 1万円 | 8件/10件 | |
| 10万円 | 15件/15件 | |
| 1万円 | 16件/16件 |
2026年10月時点の記録では1万円からの事業者がいちばん多く、1円から申し込める事業者がある一方で、10万円や50万円からの事業者もあります。事業者ごとの違いは「1万円から始められるか」で扱っています。
よくある質問
Q. 不動産クラファンは預金の代わりになりますか
A. 預金と違って元本は保証されず、運用期間中は引き出せません。いつでも使える必要があるお金の置き場所とは、性質が違います。
Q. 個人向け国債と不動産クラファンは、どちらの利回りが高いですか
A. 2026年10月の募集では、個人向け国債の利率は年2.05〜2.39%で、不動産クラファンの想定利回りはそれより高い募集が中心です。ただし国債は国が元本と利子を支払い、不動産クラファンの分配は運用の結果で変わります。利回りの差は、このリスクの違いに対応しています。
Q. ミドルリスク・ミドルリターンとは何ですか
A. リターンの振れ幅(リスク)と期待できるリターンが、預金のような低いものと株のような高いものの中間にある商品を指す言い方です。決まった基準があるわけではなく、不動産クラファンには市場の値段がないため振れ幅を数字で測れません。換金できないことや、事業者の信用に頼ることは、この言葉には表れません。
Q. NISAで不動産クラファンは買えますか
A. 買えません。NISAの対象は上場株式・投資信託などで、不動産クラファンの出資は含まれていません。上場REITは対象です。理由は「NISAは使えるか」で、法律の条文から説明しています。
この記事は一般的な説明で、特定の商品への投資をすすめるものではありません。金利・利率・税制は変わることがありますので、最新の内容は各金融機関・財務省・国税庁の案内と、各事業者のサイト・契約成立前書面で確かめてください。