不動産クラウドファンディングは、インターネットで多くの人から集めた小口のお金で事業者が不動産を運用したり不動産を担保に貸し付けたりして、得られた収益を出資した人に分配する仕組みです。1万円から申し込める募集が多い一方で、元本は保証されておらず、想定利回りも事業者が示す予定の値です。この記事では仕組みと注意点をまとめたうえで、実際の募集がどんな条件で出ているかを、クラカレの記録の表でお見せします。
仕組み:お金はどう流れるか
不動産クラファン(略してこう呼ぶことが多い)のお金は、次の順に動きます。
- 事業者が、運用する物件や貸付先、想定利回り、運用期間、募集総額を決めて募集を出す
- 投資家が事業者のサイトで申し込み、出資する
- 事業者が、集まったお金で物件を買って貸したり売ったり、または貸し付けたりする
- 賃料・売却益・利息などから、出資額に応じて投資家に分配する
- 運用期間が終わると、出資したお金が戻る(これを「償還」と呼びます)
投資家がするのは申し込みと入金までで、物件の管理や入居者の募集は事業者が行います。そのかわり、物件をいつ売るか、賃料をいくらにするかといった判断に投資家は関われません。
不動産を運用する型と、貸し付ける型
クラカレに載っている事業者は、法律の枠組みで大きく2つに分かれます。
| 不動産を運用する型 | 貸し付ける型(貸付型) | |
|---|---|---|
| よりどころの法律 | 不動産特定共同事業法(不特法) | 金融商品取引法 |
| 事業者が受けるもの | 国土交通大臣・金融庁長官または都道府県知事の許可 | 第二種金融商品取引業の登録 |
| 分配のもとになるお金 | 物件の賃料・売却益 | 貸付先が払う利息 |
| お金が戻らなくなる主な場面 | 物件価格の下落・空室・売却の遅れ | 貸付先の返済の遅れ・貸し倒れ |
不特法は出資を募って不動産を売買・賃貸し、その収益を分配する事業を許可制にした法律です。平成29年の改正では、インターネットで契約まで行う形(クラウドファンディング)に対応した環境が整えられました(国土交通省「不動産特定共同事業(FTK)法の概要」)。貸付型は、ファンドを通じて企業などにお金を貸す仕組みで、仲介する事業者には第二種金融商品取引業の登録が必要です(金融庁「ソーシャルレンディングへの投資にあたってご注意ください」)。
どちらの型かは、事業者のサイトの会社情報にある許可・登録の番号で見分けられます。許可の種類と確かめ方は「不動産特定共同事業法(不特法)の許可」に、貸付型との違いは「ソーシャルレンディング(貸付型)とは」にまとめています。
契約の形:匿名組合型と任意組合型
不特法の募集でよく見かけるのは「匿名組合型」という契約です。商法では匿名組合で出資したお金は営業者(事業者)の財産に属すると定められていますので(商法536条)、投資家は物件の持ち主になるわけではなく、事業者に対して分配と出資の返還を求める立場になります。もう1つの「任意組合型」は、投資家が組合員として物件の持ち分を持つ形で、最低投資額や税金の扱いが変わります。違いは「匿名組合型と任意組合型の違い」で詳しく扱います。
実際の募集の数字(クラカレの記録)
ここからは、2026年9月1日以降に始まった募集を、クラカレの記録で数えた表です。表はページを作り直すたびに最新の記録に置き換わります。クラカレでは不動産を運用する型と貸付型の両方を記録していますので、表もその両方を合わせた数です。
想定利回り
想定利回りは、1年あたりで見込まれる分配の割合です。事業者が示す予定の値で、実際の分配はこれより少なくなることもあります。
| 想定利回り(年率) | 全体 | 不特法の許可の事業者 | 金融商品取引業の登録の事業者 |
|---|---|---|---|
| 4%未満 | 12件(9%) | 2件(6%) | 10件(10%) |
| 4%台 | 10件(8%) | 6件(17%) | 4件(4%) |
| 5%台 | 7件(5%) | 3件(8%) | 4件(4%) |
| 6%台 | 31件(23%) | 11件(31%) | 20件(21%) |
| 7〜9%台 | 46件(35%) | 5件(14%) | 41件(43%) |
| 10%以上 | 26件(20%) | 9件(25%) | 17件(18%) |
2026年9月以降の記録では、年6%以上の募集が半分を超えていて、10%以上の募集もあります。どの範囲が多いかは、その時期にどの事業者が多く募集したかで変わります。利回りの高さは物件や貸付先のリスクの高さと結びつくこともありますので、数字だけで比べないことが大事です。詳しくは「想定利回りの見方」をご覧ください。
運用期間
運用期間は、お金を預けて運用する期間です。この間は、原則としてお金を引き出せません。
| 運用期間 | 全体 | 不特法の許可の事業者 | 金融商品取引業の登録の事業者 |
|---|---|---|---|
| 3か月以下 | 5件(4%) | 3件(8%) | 2件(2%) |
| 4〜6か月 | 26件(20%) | 10件(28%) | 16件(17%) |
| 7〜12か月 | 85件(64%) | 17件(47%) | 68件(71%) |
| 13〜24か月 | 12件(9%) | 2件(6%) | 10件(10%) |
| 25か月以上 | 4件(3%) | 4件(11%) | 0件(0%) |
2026年9月以降の記録では、1年以内に終わる募集が大半です。数年にわたる募集もありますので、お金を使う予定の時期と運用期間が重ならないかを先に確かめておきましょう。期間で比べる見方は「運用期間で比べる」にまとめています。
最低投資額
最低投資額は、1回の申し込みで出せるいちばん小さい額です。
| 事業者 | 最低投資額(いちばん多い額) | その額の件数 |
|---|---|---|
| 1円 | 11件/11件 | |
| 1万円 | 4件/4件 | |
| CCAMEL | 10万円 | 5件/6件 |
| 1万円 | 9件/9件 | |
| 1万円 | 136件/146件 | |
| 1万円 | 27件/27件 | |
| 1円 | 21件/21件 | |
| 10万円 | 18件/18件 | |
| 50万円 | 90件/90件 | |
| 2万円 | 88件/88件 | |
| 1万円 | 30件/30件 | |
| RRimple | 1万円 | 6件/6件 |
| 10万円 | 12件/12件 | |
| 10万円 | 35件/35件 | |
| 1万円 | 4件/6件 | |
| 1万円 | 40件/40件 | |
| 1万円 | 50件/50件 | |
| 5万円 | 1件/1件 | |
| 1万円 | 50件/50件 | |
| 1万円 | 8件/10件 | |
| 10万円 | 15件/15件 | |
| 1万円 | 16件/16件 |
1万円から申し込める事業者が多い一方で、10万円からの事業者もあります。同じ事業者の中でも募集によって変わることがあります。事業者ごとの違いは「1万円から始められるか」で扱います。
良い点として挙げられること
不動産クラファンの良い点としてよく挙げられるのは、次のようなことです。
- 少額から出資できる。現物の不動産を買うのに比べて、1口あたりの金額が小さい
- 物件の管理や入居者の対応を事業者が行うので、出資した後の手間が少ない
- 運用期間が1年以内の募集が多く、期間の短い運用を選べる
- 募集ごとに物件や貸付先、劣後出資の割合が示されていて、何にお金を出すのかが見える
- 上場している投資信託やREITのように、市場で毎日値段が付いて上下するものではない
ただし、最後の点は「値動きが見えない」ということでもあり、損失が出ないという意味ではありません。
注意しておきたいこと
元本は保証されていない
物件価格の下落・賃料の減少・貸付先の返済の遅れなどで、戻るお金が出資額より少なくなることがあります。匿名組合型では、損失で出資が減っていれば、事業者が返すのはその残りの額と商法で定められています(商法542条)。
想定利回りは約束ではない
想定利回りは予定の値です。運用がうまくいかなければ、分配が減ったり、なくなったりします。
途中で解約できないのが原則
運用期間の間は、お金を引き出せないと考えておきましょう。
償還が遅れる・延びることがある
物件の売却が遅れたり、運用期間が延長されたりして、お金が戻る日が予定より後になることがあります。
事業者が倒産したときの扱いは、契約の形で変わる
匿名組合型では出資が事業者の財産になりますので、事業者の倒産の影響を受けます。運営会社とは別の会社(特例事業者)を契約の相手方にする仕組みもあります。元本割れ・遅延・倒産がどう起きるかは「不動産クラファンのリスク」で詳しく扱います。
申し込んでも買えないことがある
先着の募集は早く満額になることがあり、抽選の募集は当たらないことがあります。どれくらい買いにくいのかは「「申し込んでも買えない」は本当か」で、記録の数字から確かめています。
お金が運用に回っていない期間がある
申し込む前に入金しておく「事前入金」の事業者では、買えなかった間もお金が口座に置かれます。申し込みから分配・償還までの流れは「申込から分配までの流れ」に、入金方式の違いは「事前入金と申込後入金の違い」にまとめています。
分配金には税金がかかる
匿名組合型の分配金は、原則として雑所得になります(国税庁 所得税基本通達36・37共-21)。給与などと合わせて税率が決まる所得ですので、確定申告が必要になる場合があります。詳しくは「分配金の税金」をご覧ください。個別の判断は税理士・税務署へご相談ください。
「やめとけ」と言われる理由を記録の数字で確かめた「「やめとけ」と言われる理由を、記録の数字で確かめる」も合わせてどうぞ。
ほかの不動産投資との違い
| 不動産クラファン | REIT(不動産投資信託) | 現物の不動産 | |
|---|---|---|---|
| 何を買うか | 募集ごとの出資の持ち分 | 証券取引所に上場した投資証券 | 物件そのもの |
| いくらから | 1万円〜10万円程度の募集が多い | 1口の市場価格による | 物件の価格 |
| 途中で売れるか | 原則できない | 市場で売買できる | 売却に時間がかかる |
| 管理の手間 | 事業者が行う | 運用会社が行う | 自分か管理会社 |
REITや不動産小口化商品との違いは「REIT・不動産小口化商品・不動産クラファンの違い」で、デジタル証券(不動産STO)との違いは「セキュリティトークン(デジタル証券)とは」で扱います。
次に読む記事
クラカレのガイドは、6つのカテゴリに分けています。最初に読むものとして、各カテゴリの主な記事を挙げておきます。
はじめての不動産クラファン
- 不動産クラファンの言葉:想定利回り・劣後出資・満額などの意味
- 不動産特定共同事業法(不特法)の許可:事業者の許可の種類と確かめ方
選び方・比べ方
- 比べるときに見る項目:総合点を付けずに比べる方法
- 先着と抽選の違い:どちらの募集が多いか
- 募集は何曜日の何時に始まるか:開始時刻の記録
- 劣後出資の割合の見方
事業者を知る
- 不動産クラファン事業者の一覧:運営会社・許可・入金方式
- 事業者ごとの満額になった割合・満額までの時間・抽選の倍率
税金・確定申告
市場レポート
STO・ほかの投資型クラファン
サイトの使い方は「はじめての方へ」に、事業者ごとの条件は「事業者の一覧」に、これからの募集は「カレンダー」にあります。
よくある質問
Q. 銀行の預金と何が違いますか
A. 不動産クラファンへの出資は預金ではなく、元本は保証されていません。分配は運用の結果によって変わり、運用期間中は原則として引き出せません。
Q. 不動産クラファンはどこで申し込みますか
A. 各事業者のサイトで会員登録と本人確認をしてから申し込みます。クラカレは各社の公開情報から募集の予定と結果をまとめているサイトで、クラカレの中では申し込めません。
Q. 利回りが高い募集と低い募集は、何が違うのですか
A. 物件の種類(開発中か、すでに賃料が入っているか)・運用期間・劣後出資の割合・貸付先などが違います。利回りの高さはリスクの高さと結びつくこともありますので、契約成立前書面で利回りの根拠や物件の状況を確かめましょう。
この記事は一般的な説明です。各募集の条件は変わることがありますので、最新の内容は各事業者のサイトと契約成立前書面で確かめてください。